青山学院大学 寄付講座

2011年6月29+日

楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史 氏


第10回目となる「GMOインターネット青山学院大学寄付講座」は、言わずと知れた日本の一大ベンチャー企業『楽天株式会社』代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇。日本人のライフスタイルを大きく変えたインターネット・ショッピングモール『楽天市場』や、田中将大選手をはじめとする有名選手が多く在籍するプロ野球球団『楽天イーグルス』は、いまや日本では知らない人はいないというぐらいの存在となっている。


現在、楽天グループのトップとして多忙を極める三木谷氏だが、以前は日本興業銀行の行員として投資銀行業務を担当。ハーバード大学留学中に学んだ「起業こそが国を発展させる」という思想のもと、IT革命・ブロードバンド時代の到来を予感し、1997年に楽天株式会社の前身となる株式会社エム・ディー・エムを設立し、同年に『楽天市場』を開設した。2000年のジャスダック上場以降、事業を拡大し、Eコマース、トラベル、銀行、証券、クレジットカード、電子マネー、ポータル&メディア、オンラインマーケティング、プロスポーツ分野と多岐にわたる分野でサービスを展開中。

今回は、三木谷氏とGMOインターネット株式会社代表取締役会長兼社長の熊谷との対談が実現。
熊谷が三木谷氏の「ベンチャー企業経営論」を紐解いた。

起業までの道のり

「起業こそ国を発展させるために重要」という思想に共感した20代

楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史 氏

みなさん、こんにちは。楽天株式会社の三木谷です。

今日は、私がなぜ、どのような経緯で楽天株式会社をスタートさせたのか、きっかけとなった出来事や、これからの時代を担うみなさんに期待することなどをお話したのち、熊谷代表とのパネルディスカッションを通して「ベンチャー企業経営論」講座を進めていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

昨日(6月28日)、楽天イーグルスvsソフトバンクホークス戦がありまして、残念ながら完敗してしまいましたが(苦笑)、その時、孫さんとご一緒させていただき、二人で色々と昔話などをいたしました。彼は私を紹介する時に、「この人が俺の先生や!」なんて言ってくださるのですが、それは私が日本興業銀行の銀行員として働いていた時代からの流れでおっしゃってくださっている言葉です。

私は、アメリカのハーバード大学大学院に留学したのち、日本興業銀行の銀行員として企業買収や投資銀行業務を担当していました。留学する以前は、起業について積極的に考える機会はなく、むしろ大手企業に就職して、そこで出世していくのがビジネスマンの王道だと考えていたくらいでした。

しかし、アメリカに行ってみると「起業こそ価値があり、国を発展させるために重要である」という考え方が浸透していて、多くの人が夢や目的を持って社会人になっていたのです。「私も起業して、国のためにならなくてはいけない」と思いながら帰国したのが1993年。とは言え、学費も旅費も会社が全て負担してくれていたので、すぐに退職とはいかず、投資銀行業務に就いた次第です。当時、お客様はなぜかベンチャー企業ばかりで、改めて起業について考えさせられる日々でした。

そんな時、1995年に阪神淡路大震災が発生。神戸出身の私にとっては非常にショッキングな出来事でした。当時、アメリカに出張するため空港に向かっていたのですが、阪神高速道路が崩壊する様がテレビに映しだされ、新聞には私の親戚や友人を含め訃報が続々と掲載され、ただごとではない雰囲気に凍りついたのを覚えています。

急いで神戸に戻り、しばらくそこで生活をするうちに、自分の将来についてじっくり考えるようになり、結局この年に銀行を退職。その時、強く感じたのは『人生は有限資源である』ということでした。「人生には限りがある、思い立ったら吉日」と、急に退職を申し出たわけですが、その先どんなことをするのかは全然決まっていなかったんです。

まずは、自分の会社を設立し、これまでの延長で、アメリカの会社を買収し日本に持ってくるとか、アラインアンスを交渉するといったところのコンサルティングの仕事からはじめたのですが、次第にインターネットのパワーやブロードバンド時代の到来を強く感じるようになり、インターネットビジネスを立ち上げることを決意しました。

これからの時代を担うみなさんに期待すること

仮説を立て、それを信じて突き進むことこそが成功のカギ

楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史 氏

当時はISDNというインターネット接続が採用されていて、まだまだ一般的にインターネットが使われるようになるとは考えられていない時代だったのですが、私たちは「いずれインターネットでショッピングをするのが当たり前になる」という仮説を立て、それを信じて突き進んできました。

楽天株式会社が成功したと言われるなら、その成功の秘訣は「仮説を立て、それを信じて実行してきた」ことに他なりません。その時はあり得ないと考えられていることも、可能性を信じて突き進めば現実になる、それがインターネット業界の素晴らしいところです。

いまの時代に欠けているもの、それは果敢に挑戦する気持ちと国際的な感覚(グローバルな視点)です。先日、フランスで開催されたG8において、世界のIT企業トップ数名と一緒に各国首脳と会合する機会をいただいたのですが、フランスのサルコジ大統領や米国のオバマ大統領がiPad等のタブレットPCを持ち込んで使いこなされており、国家的なミーティングで、インターネットが強く影響を及ぼしていることを感じました。

国がインターネットによって変わる、国という枠に捉われないインターネットという新たな経済圏=『第8の大陸』が誕生するという仮説をとても強くイメージした瞬間でした。

日本は明治維新や第二次世界大戦によって大きく変貌を遂げた国です。次はインターネットによって大きな進化を遂げるものと信じていますし、そうなるために私たちIT企業が担うべき役割は大きいと考えています。これからの時代を生きる、みなさんのような若者がそのことをしっかりと認識し、国際的な感覚を持って、仮説を立て強い意志のもと実行していってくださればと思います。

日本人に大きく欠如しているのは先ほど申し上げた国際的な感覚です。そこで、私たち楽天株式会社では、社内の公用語を英語にするなどし、全社をあげて国際化を推し進めているところです。語学力は一つのきっかけに過ぎないかもしれませんが、語学力なくしては対等なコミュニケーションは望めません。

是非みなさんも語学力、必要条件として英語、できれば中国語などを勉強され、さらにITに関わる技術的なスキルを身に付けておかれると良いでしょう。これからの時代を担うみなさんに強く期待しています。

パネルディスカッション 三木谷浩史 × 熊谷正寿

引きつづき熊谷代表とのパネルディスカッションに入らせていただきます。

三木谷浩史 × 熊谷正寿

熊谷:
経営者に欠かせない大切な要素として『健康管理』をあげる方が多いと思いますが、三木谷さんはいかがですか?

三木谷氏:
しっかり健康管理しているうちに入るか分かりませんが、週2〜3回はジムに通って体を鍛えています。会社にもジムを作って、社員が利用できるようにもしています。ですが、アルコール量が上回ってしまって…(苦笑)健康とは言えませんね。


熊谷:
学生時代にたくさん勉強された三木谷さんにお聞きします。
社会人になってどんな勉強をしましたか?また、何を学ばれていますか?

三木谷氏:
学生時代は全然勉強しなかったんです!テニスに明け暮れていましたね。いまは、中国語を勉強しています。英語は世界で通用しますが、中国に関しては中国語じゃないと受け入れない文化がありますから。中国語でコミュニケーションが取れれば、ビジネス上とても役に立つでしょうね。


熊谷:
社内公用語を英語にされるとのことですが、現在どの程度浸透していますか?

三木谷氏:
私が出席する経営会議やドキュメントなどは、ほぼ(90%以上)英語になっています。現場サイドになると、もう少し数字は下がるかもしれませんが、来年7月を目処に完全実施を目指しています。


熊谷:
成長企業の共通点として、『組織力』『徹底力』があると考えているのですが、英語以外に徹底させていることはありますか?

三木谷氏:
世界中の国から様々な文化を持つ企業にグループに加わってもらっていますので、「うちのやり方に従ってください」では難しいことも多々あります。基本的にはその企業のカラーを出してもらいながらも、一つだけ徹底してもらっていることがあります。それは名札の位置。左胸に付けることを徹底し、これが私たちの制服であることを意識してもらっているのです。これをフランス人に徹底してもらうのがなかなか難しかったですね(笑)。「左胸にポケットがない服の時は?」とか、「服に穴が開く」とか。でも、唯一お願いしていることなので、これは徹底していただいています。

楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史 氏

熊谷:
『楽天市場』をここまで大きくできた秘訣は何だったのでしょうか?

三木谷氏:
最初の成長要因は圧倒的にコストを下げたことです。マージン13%、月額30万円なんてことを言っていた時は、やはりどこも出店してくれませんでしたが、月5万円にするから、そのかわり出来るだけ店舗側でページの編集を行ってください、という姿勢にしてから状況が一変しました。また『楽天大学』といったノウハウ共有の場を用意し、店長様に売れる仕組みを提供することで当社の売上が伸びていく構図を描きました。お互いにハッピーになることが成功の秘訣だったと思います。


熊谷:
インターネットは今後どのように人間の生活を変えていくのでしょうか?
私は、頭の中にICチップが埋め込まれる時代を想像することがあるのですが、三木谷さんはどう考えていらっしゃいますか?

三木谷氏:
現在、アメリカでは、電子書籍がものすごい広がりを見せています。ほぼIT化されるとしても、本だけはなくならないと考えていたのですが、本ですら必要なくなるかもしれませんね。そうなった時、携帯やiPadのような持ち歩くデバイスはなくなり、もっと単純なデバイス、例えば時計一体型のようなものが一般的になっている可能性はありますね。


熊谷:
最後に、生まれ変わってもインターネット業界に関わりたいと思いますか?

三木谷氏:
ビジネスは人を幸せにするツールの一つだと考えています。フェアで、若者がエネルギッシュな国、暮らしやすい社会を築くために、インターネット業界でビジネスを立ち上げた次第です。なので、生まれ変わったのち、世の中を変えるビジネスツールとしてインターネットが最適だと考えれば、そうするかもしれません。

PROFILE

三木谷 浩史

三木谷 浩史1965年、兵庫県生まれ。
楽天株式会社 代表取締役会長兼社長

1988年一橋大学卒業後、日本興業銀行に入行。
93年ハーバード大学にてMBA取得。興銀を退職後、96年クリムゾングループを設立。
97年2月エム・ディー・エム(現・楽天)設立、代表取締役就任。
同年5月インターネットショッピングモール「楽天市場」を開設。
2000年には日本証券業協会へ株式を店頭登録(ジャスダック上場)。 現在、楽天は、Eコマース、トラベル、銀行、証券、クレジットカード、電子マネー、ポータル&メディア、
オンラインマーケティング、プロスポーツ分野と多岐にわたる分野でサービスを展開。
また、海外展開を加速化させており、アジア、欧州、北米、南米にも進出。
従業員は全世界で1万人を超える。


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