青山学院大学 寄付講座

2011年5月25日

株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 南場 智子 氏


第6回目となる「青山学院大学寄付講座」は、『怪盗ロワイヤル』など人気ゲームでお馴染みの『Mobage』を運営する国内屈指の高成長企業、株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役社長南場智子氏が登壇。


突然の退任発表から数日となるこの日、「もう社長じゃなくなる人の話をわざわざ聞きに来てくれてありがとね!」と学生たちに明るく挨拶する南場氏に、会場からは大きな拍手が送られた。

外資系の大手コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン(以下、マッキンゼー)でキャリアを積んだのち、ハーバード大学にてMBAを取得、帰国後はマッキンゼーでパートナー(役員)に就任されるという華やかな経歴の持ち主である南場氏だが、マッキンゼー時代は「仕事が嫌で仕方なかった」という意外な一面も……。

世界のトップを目指す同社の行く末、そして南場氏が語った『ベンチャー企業論』と『人生を彩る仕事術』とは?

DeNAについて

既存のビジネスモデルに愛着を持ち、成長させ続ける魂。
既存事業と新規事業の共存がDeNAのDNA

株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 南場 智子 氏

今日、ここにお集まりいただいたみなさんには申し訳ないのですが、6月25日に(株式会社DeNAの)社長を退任することになりました。

突然の決定で、私自身も非常に残念なのですが、以前からこの講座で講演することが決まっていたので「もう社長じゃない人の話を聞いて何になるんだ?」とみなさんに言われないよう、次期社長に登壇を変わってもらえないか説得したのですが、すいません、交渉がうまくいきませんでした(笑)。

今日はまず、DeNAについて少しお話をしようと思っていたのですが、さきほどの「『Mobage』やっている人はどのくらいいますか?」という質問に、みなさんの手があまり挙がらなかったので、もう帰っちゃおうかなと思っています(笑)。みなさんモバゲーやってくださいね! 『忍者ロワイヤル』、これ、やらないとダメですよ。本当に面白いから。

DeNAについて、「モバゲーの会社」とご紹介いただきましたが、その通り、現在は売上のほとんどを『Mobage』(の売上)が占めています。1999年会社設立から今日まで、四半期ごとの営業利益と、その時々のメイン事業を紹介すると、以下の流れになります。

1999年〜 インターネットオークション

2002年〜 ショッピングモール(黒字化)

2004年〜 モバオク(2005年に東証マザーズに上場)

2005年〜 モバイル広告

2006年〜 モバイルSNSモバゲータウン(現・『Mobage』)

ここまでは順調だったのですが、2007年後半から、設立後はじめて営業利益が落ち込んで、2009年まで成長がストップした時期がありました。設立後、数年間の赤字を出していた時期と、成長が止まったこの2007年〜2009年が、DeNAにとってはすごく苦しかった時期です。それを打開したのが『怪盗ロワイヤル』などのソーシャルゲームでした。

もともと、DeNAはプラットフォーム側の会社だったのですが、コンテンツに着手して、モバゲーをアバターのビジネスモデルから、大きくソーシャルゲームのビジネスモデルに切り替えました。したがって、現在はモバゲーを運営していますが、2〜3年ごとに新規事業を追加しながら成長してきた会社です。新たな事業に乗り換えるのではなく、新規事業を『追加』していくというのが、私たちDeNAのDNAです。

例えば、設立当初からあるe-コマース事業は、いまだに事業本部としてしっかりと成長を続けていて、毎年(前年比)約30%アップの売上を上げています。一つのビジネスモデルを大切にしながら、みんな愛着を持って事業を続けつつ、そこを基盤として2〜3年に一度、新しく事業の柱を建てる、それがDeNAのやり方です。

日本人だけでやろうとしない。世界中に仲間を作り『グローバルチーム』で成功事例を築く

株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 南場 智子 氏

また、現在は『国際戦略』にも注力しています。まず、『スマートフォン』を主軸に置いて、そのうえに『バーチャルコミュニティ』、『ソーシャルゲーム』、これら3つの掛け算で、エンターテイメントプラットフォームとして、ゆくゆくは世界のトップに立ちたいと考えています。

この1〜2年はアプリを中心に事業展開しつつ、いずれはOSをまたがったコミュニティプラットフォームに成長したい。とはいえ、このポジションを狙っている企業はたくさんあり、シリコンバレーに行くと、『DeNA of the Western World』といった企業ミッションを掲げている企業が結構あるそうです。

つまり、「うちは世界のDeNAになります」と。カチンともきますが、それだけモバゲーがシリコンバレーのベンチャー企業に注目されているということです。

さて、この戦いに勝つために私たちがまず考えたのは、世界中に仲間を作ることでした。 現在、DeNAでは、サンフランシスコ、上海、東京、ニューヨーク、アムステルダムなど世界中に拠点を作っていて、優秀な人材の確保を進めています。

今後、世界のトップを目指していくうえで、海外、特にアメリカやヨーロッパの人材は不可欠になる。だからこそ、「日本人だけでやらない。グローバルチームで取り組んでいく」ことが大事だと、私たちは考えています。

みなさん、IT業界における世界的リーダー(企業)といえば、どこを思いつきますか? Google? Yahoo? Apple? 代表的な企業をいくつか挙げたとしても、それらほとんどがアメリカの企業です。日本人のリーダーはまだ一人も出ていない。なぜ日本の会社はリーダーになれないのでしょうか。

ここでみなさんに『世界のアクセスシェアデータ』を見ていただきます。これは2006年〜2009年後半の数字をグラフ化したものですが、一目瞭然、世界のアクセスシェアはたった3年半で大きく変動しています。MSNが激減、Googleは微増でしかなく、YouTubeが急増、Facebookは圧倒的なシェア拡大を示しています。たった3年半でこの激動です。 

これこそが、この業界の面白いところだと私は思います。既得権益で守られない世界。正しい戦略、抜きん出た実行力がある人だけが勝ち残る世界です。まさに実力勝負、 その世界でなぜ日本人がリーダーになれないのか? これに関しては、国民性や制度・規制の問題など様々な理由があると思いますが、私たちDeNAでは、理由によらず、「日本人だけではやらない」という選択をしました。世界中に仲間を作り、グローバルチームを結成して、まずは一つ大きな成功事例を作ってみようと考えています。

そんな矢先、個人的な理由で退任することになって、私自身、非常に残念です。ですが、私のエネルギーや時間を100%社業に費やすことができなくなった以上、会社の舵取り=キャプテンを続ける資格はないだろうと判断し、即、次期社長にバトンタッチすることを決めました。次期社長はもちろん、DeNAにはまだまだ面白い人材がたくさんいますので、みなさん、今後のDeNAに大いに期待していてください。

質疑応答

本当は60分が講義で30分が質問タイムと聞いていたんですが、あとの60分は全部質問の時間にします。 何でもどうぞ。

「自分にとってこの会社は合格か?」を見極める就職活動にして欲しい。
幾多の失敗を許し、仕事を任せてくれる会社こそ本物。

----学生「南場社長は学生時代ろくに就職活動をしていなかったと仰っていましたが、なぜマッキンゼーに入社できたと思いますか? 就職活動に向けたアドバイスがあればお願いします。」

株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 南場 智子 氏

私は基本的に頭が良いフリをするのがうまいんです。だから面接はめちゃくちゃ得意。もし、コンサルティング会社とかを目指すのであれば、頭が良いフリしてみますか?(笑)。でも、いまはそういう時代ではありません。これからは、ブランド(社名)に拘って、自分を偽ってまで会社に入る時代ではないし、終身雇用の時代でもない。会社に入ることを目的とするのではなくて、『自分の成長』とか、『人生に彩りを与えるため』に働こうと思わない限り、良い就職活動はできないと思います。

みんなに言いたいのは、「大きなうねりを作れる人」になって欲しいということです。仕事に限らず、大きなうねりを作るために必死になったり、考えたり、行動することが大事で、それを認めてくれる、やらせてくれる会社と出会うことが第一。それは『失敗』をすることでもありますが、たくさん『失敗』して、そこから何かを学ぶことは本当に貴重なことだと思います。たくさん『失敗』させてくれる会社かどうか、そして、それでも仕事を任せてくれる会社かどうか、つまりその会社が自分を成長させてくれる場なのかどうかをしっかり見極めて欲しい。自分にとって合格かどうか、そういった目線でこれからの就職活動を戦って欲しいと思います。


自分の成果を気にするのではなく
「クライアントのためになりたい」という気持ちが、良い仕事へ導く。

----学生「いつ頃から経営者になろうと考えはじめたのですか? 20代の頃に思い描いていたキャリアプランなどを教えてください。」

参考になるか分かりませんが、メカニカルに答えします。「いつ頃から経営者になろうと考えていたか?」、1999年1月7日からです。あとはキャリアプラン、 これも、そんなにたいしたことはなくて、とにかく、私ものすごいミーハーで負けず嫌いなんです。だから、就職活動でも、競争倍率の高い会社という意味でマッキンゼーがすごく魅力的に感じました。他の学生たちには絶対負けたくないというのがあって、相当がんばってしまいました。

それで入社しましたが、本当に仕事ができませんでした。でも最後の最後、「もう辞めてやる」と思った後の数年は、仕事が楽しくなって、良い結果を残せるようになった。肩の力が抜けたというか、空回りしなくなったんですね。それまでは周りに「仕事ができない奴」だと思われたくなくて、弱さを見せられなかったけれど、「どうせ辞める会社だ」と思ってからは、素直に色んなことを相談できるようになった。自分の成果を気にするのではなくて、「クライアントのためになりたい」という気持ちだけで働くようになったら、どんどん良い仕事ができるようになりました。そこで調子に乗って、「自分で経営もやってみたい」と考えたのが失敗だったのかもしれませんが(笑)。


「自分の人生に彩りを与える」ために働ける場所

----学生「いまの段階でやりたいことが見つからないのですが、まず何をすれば良いでしょうか?」

そんなこと、全く心配しなくていいです。 二十歳そこそこでやりたいことがある人のほうが珍しいと思います。社会に出て、好きなだけ暴れてからでいい。あとからいくらでもやりたいことは見えてくるはずですし、そのために仕事を何度か変わっても構わないと私は思います。心配して焦るのではなく、しっかりと「自分の人生に彩りを与える」ために働ける場所を見つけてください。

みなさん、ご清聴ありがとうございました。

PROFILE

南場 智子

南場 智子1962年、新潟県生まれ。
株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO(2011年6月25日より同社取締役)

1986年4月、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。
1988年、マッキンゼーを退職し、ハーバード大学へ。
1990年にはハーバード大学にてMBAを取得し、その後マッキンゼーに復職。
1996年、歴代日本人女性で3人目のマッキンゼーパートナー(役員)に就任。
1999年に株式会社ディー・エヌ・エー(以下:DeNA)を設立。
同年、マッキンゼーを退職し、DeNA代表取締役社長に就任(現任)。
2003年に内閣IT戦略本部員、2004年に規制改革・民間開放推進会議委員、
2007年には知的財産戦略本部コンテンツ・日本ブランド専門調査会委員に就任。
2009年10月、「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」
国際競争力強化検討部会構成員に就任(現任)。


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