青山学院大学 寄付講座

2011年6月8日

グリー株式会社 代表取締役社長 田中 良和 氏


第7回目となる「GMOインターネット青山学院大学寄付講座」は、会員数2500万人のソーシャル・ネットワーキング・サービス『GREE』を運営する、グリー株式会社代表取締役社長田中良和氏が登壇。


SNSやソーシャルゲームですっかりお馴染みとなった同社だが、設立は2004年と若く、今後さらなる飛躍が期待される成長企業である。若き社員を束ねる田中氏は、エンジニアとして自ら『GREE』の開発を手掛けてきた実力派。早くからインターネットの可能性に注目し、「世の中を大きく変える仕事がしたい」と、新卒で『So-net(ソネットエンタテインメント株式会社)』に入社。その後、楽天株式会社へ転職すると、独学で『GREE』の開発を成し遂げた。

田中氏の人生を変えたシリコンバレーでの出会い、そして国内屈指の成長企業である楽天株式会社で得たものとは? 当講座最若手社長が語る『ベンチャー企業経営論』に、学生たちはみな真剣に耳を傾けていた。

起業までの道のり

歴史が大きく変わる数十年を生きているという実感。
世の中を変える仕事がしたい!

グリー株式会社 代表取締役社長 田中 良和 氏

みなさん、こんにちは。今日は、僕が起業するまでの道のりとインターネット業界の今後についてお話したいと思います。

まず、僕の『学生時代〜社会人になるまで』を振り返ってお話しましょう。僕は現在34歳。学生時代は決して真面目とはいえない学生生活を送っていました。

学校には行っていましたが、授業もサークルも、正直つまらなく感じていましたし、何の目標も見つからない自分に半ば嫌気がさしていました。

中高生の頃から「二十歳までに人生の目標を決めていないヤツは落ちこぼれだ」なんていう、全く根拠のない強迫観念に囚われていて、友人に会うたびに「お前の人生の目標は何だ?」と問い詰める、かなりイケてない学生でした(苦笑)。

そんな学生時代ではありましたが、インターネットと出会えたことで人生が大きく変わり始めます。僕はもともと物理や化学が好きだったのですが、星座や元素って歴史上のある数年間で一気に発見されているんですよね。たった数年間で学問の常識が大きく変わり、時代が変化する、これってすごいことだなと思うんです。

インターネットもそれと同じなのではないかと。「僕らはいま、時代が大きく変わる歴史的瞬間に立っているのではないか。であれば、その瞬間に立ち会える、世の中を変えるような仕事がしたい!」と思ったのです。

自分が社会人として働ける期間はせいぜい30年程度。せっかく30年働くのであれば、いつか歴史を振り返った時に、「この数十年で歴史が一気に変わった」と言われる時代や業界に関わっていたい。自分の人生をインターネットの可能性に懸けてみたい、そう思いました。

とは言え、当時パソコンを持っている人はほとんどいなく、必死になってインターネットの可能性を説いても、相手にされない時代でした。そこで、僕は1台のパソコンを買ってきて、「インターネット」という言語を検索することから始めました。

すると僕と同じことを考えている人が少なからずいることが分かったのです。インターネットの可能性を説きながら、新たなビジネスモデルを築こうとしている人が結構いた。例えば、ミクシィの笠原君や、現在『フォートラベル』というサイトを運営している津田君などは、当時からの同志・友人で、津田君は楽天に入社するきっかけとなってくれた人物でもあります。

それ以外にも、検索結果に出てきた「インターネットに詳しそうな人」を訪ねて、友人になるケースはよくありましたね。現在、インターネット業界で頑張っている企業の方々は、結構この時代からの知り合いという場合が多いです。

「10年ぐらい頑張って35歳くらいまでには一人前に」という上司の言葉に
違和感を覚えた20代前半

グリー株式会社 代表取締役社長 田中 良和 氏

その他にも、僕の人生に衝撃を与えた出会いがいくつかあります。その一つが『パワーシフト(著/アルビン・トフラー)』という本。お勧めですので、みなさんも是非読んでみて下さい。

そして、シリコンバレーで働く若者たちとの出会い。自分と同年代の若者たちが、夜遅くまで目を輝かせて働く姿は本当に衝撃的でした。僕の知っている社会人と言えば、新橋で愚痴をこぼしながら酔いつぶれているサラリーマンでしたので、シリコンバレーの若者たちの『前向きな姿』や『情熱』には、ものすごく刺激を受けました。

そんな出会いを経て、僕も就職活動に取り掛かったわけですが、最初に受けた会社は計4社のみ。自分が本当に入社したいと思う会社だけに絞り、2社から内定をいただきました。最終的にSo-net(ソネットエンタテインメント)への入社を決めたのですが、入社後10ヶ月くらいで退社することになります。

退社のきっかけとなったのは、ある時、上司に言われた「10年ぐらい頑張って35歳くらいまでに一人前になればいいよ」という言葉。時代の変貌期に世の中を変えるような仕事がしたいと思って入社した僕は、この言葉に違和感を覚えました。一般企業であれば、35歳までに一人前になるのが普通。むしろ、早いくらいかもしれませんが、僕が思い描く生き方とはズレている、やはりインターネットベンチャー企業に入社すべきだと思いました。

インターネットベンチャー企業に入ろうと決めてから、楽天に入社するまではそんなに時間は掛かりませんでした。僕が知っているインターネットベンチャー企業と言えば楽天くらいでしたから、すぐに津田君にお願いして、とりあえず社長と会うことになり、面接に行ったつもりが、「じゃ、いつから来るの?」という話に(笑)。そのスピード感には驚きました。当時まだ50人程度しか社員がいない小さい会社だったので、いま思えば本当にラッキーだったと思います。



世の中に価値を与える人物のそばで働くということ
「成長企業」での経験が自分を大きく成長させてくれた

楽天では、入社1年目から新人研修を任されました。「田中はインターネット詳しいから、新人にインターネットの仕組みをレクチャーしてやってくれ」と言われ、いきなり研修講師になったんです。その頃、毎月30人ほど新人が入社している状況だったので、とにかく必死で勉強して、2〜3年ほど研修講師を担当しました。その後、吉田敬さん(元楽天株式会社取締役常務執行役員)から「楽天でコミュニティサービスをやりたいと思っているんだけど、作ってよ」と言われ、独学でコミュニティサービスの立ち上げに奮闘。大変でしたが、とても貴重な経験になりました。

本来であれば、制作は外注するとか、先輩社員の下で補助として開発に関わるのが精一杯だと思うのですが、入社して3年程度の自分が一から事業を任されたのです。もちろんプレッシャーはありますが、こうなると人間必死になってやるんですよね。自分しかいないから絶対に妥協はできない。ノウハウがなければ自分で調べて習得する、ただそれだけです。リソース(人材)が少ないために、どんどん大きな仕事を任せてもらえる、それがベンチャー企業で働く醍醐味だと改めて実感しました。楽天で過ごした時間はいまでも僕の財産です。特に「ここが良かった」と思う項目をまとめてみました。

◆社員数50名の時代に入社できた

◆三木谷さんの近くで働き多くのことを学べた

◆「成長企業」の成長過程を体験できた

◆責任の大きい仕事を任せてもらえた

一番良かったのは三木谷さんという偉大な方の近くで仕事ができたことですね。世の中に価値を与える人物が、何を考え、どんな仕事をしているのかは実際に見てみないと分からない。僕は三木谷さんから色々なことを学び、吸収することができて本当にラッキーでした。実は結構しょうもないことを喜んだりする人だってことも分かったし(笑)、良いこともしょうもないことも含めて、楽天時代が充実した日々だったのは、三木谷さんのお陰です。

そして、日本最大級の成長企業で、社員50人の頃から働き、その成長過程を経験できたのはとてもありがたかったです。ブログサービスの立ち上げなど、責任のある大きな仕事を任せてもらえたことがあったから、独学で『GREE』を開発・運営するノウハウや決意を固めることができたと思っています。

インターネット業界の今後

5〜10年後のトレンドを予測して「新しい」アイデアをかたちに……
ビジネスとは『波が来たときに沖にいない奴が負ける』真剣勝負である

グリー株式会社 代表取締役社長 田中 良和 氏

楽天を退職する頃には、『GREE』はユーザー数十万人を突破していました。在職中から単独・独学で開発をはじめ、ボランティア的に運営していたサービスでしたが、ある時、ユーザーから「田中さんが死んでしまったら、このサービスはどうなるのですか?」と問い合わせを受けて、起業を決意しました。

2004年12月、麻布十番のボロアパートを借りてグリー株式会社をスタートさせました。

当初は、笠原君が5年早く設立していたミクシィと比較されて、辛い批評をいただくこともしばしば、売上も軌道に乗らず、苦しい時期が数年続きましたが、2006年Webサービスのトレンドを予測することで成長への道筋が見え始め、モバイル版『GREE』開発などを経て、2008年マザーズに上場しました。現在、売上高成長率で国内No1の企業となっています。

グリー株式会社の成長を支えたキーワードは、5〜10年後のトレンド予測に他なりません。5年後、10年後に何が流行っているか、それに向けていま何をすべきか、その判断を間違えない限り、この業界で成長を続けていけるのではないかと僕は思っています。

もちろん、新しいアイデアは否定や批判されることも多いでしょう。でも、誰もが「それ、いいね!」と納得してくれるようなアイデアは、決して新しくないのです。

2012年にはスマートフォンがPCの出荷台数を抜くと言われています。それを踏まえ、2015年〜2020年にどんなサービスが流行っているかを予測し、そのトレンドに見合う、どこよりも良質なサービスを提供することが大事なのです。最後に、みなさんにお伝えしたい言葉があります。

『波が来たときに、沖にいない奴は負ける』

ビジネスもサーフィンと同じです。大きな波に乗るためには、波が来ることを予測して、波が来る前に沖に出ていなければならないのです。何事もタイミングが大事。みなさんには是非、タイミングを見極め、思い切って行動できる社会人になっていただきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

PROFILE

田中 良和

田中 良和1977年、東京都生まれ。
グリー株式会社 代表取締役社長

1999年、日本大学法学部政治経済学科を卒業後、
ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(現ソネットエンタテインメント株式会社)を経て、
2000年2月、楽天株式会社入社。
オークション、ブログ、アフィリエイト、レビューなど、
ユーザー向け新サービスの企画、開発、運用などを担当する。
2004年2月に趣味の一環としてソーシャル・ネットワーキング・サービス「GREE」を開発。
同年10月、楽天株式会社を退社。
同年12月、グリー株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。


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